大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 昭和34年(わ)2270号 判決 1964年2月20日

被告人 長谷川賀彦 外三名

主文

被告人らはいずれも無罪。

理由

第一、本件公訴事実は

「被告人らは、いずれも郵政事務官で、被告人長谷川賀彦、同永島金八郎の両名は全逓信労働組合中央本部執行委員、同宇野鎗一は同組合愛知地区本部執行委員長、同大塚鎮一は同組合名古屋中央郵便局支部長であるところ、昭和三十四年十二月三日午後二時十五分頃より同十時三十分頃までの間において名古屋市中村区笹島町一丁目二百二十五番地所在名古屋中央郵便局作業棟四階小包郵便課受入作業室にて、同組合の組合員柴田彦左衛門らと共謀の上、同局小包課長三輪喜義の指示により、受入係事務補助員鈴木淑雄ら数名が同室東隣り年賀予備室に保管中の滞貨小包郵袋約百四十個を右受入作業室に運搬して受入開袋をするために右郵袋十五、六個を運搬車に積載し、同予備室西北隅出入口より搬出せんとするやその前面に立塞がりこれを押し返して搬出を不能ならしめ、これがため前記三輪課長らが更に自ら受人開袋を搬出すべく受入作業室より年賀予備室に入室せんとするや同所附近においてその前面に被告人ら多数がスクラムを組みなどして入室を不能ならしめ、もつて威力を用い国の行う郵便業務を妨害し、その間数次にわたり前記中央郵便局の管理者たる局長庄司清らより同局外に退去すべき旨の要求を受けたにかかわらず、これを拒否して退去しなかつたものである。」

というものである。

第二、当裁判所の認定した事実

一、全逓信労働組合(以下全逓と略称する)は昭和三四年七月二九日から福岡県福岡市博多において開かれた第一一回全国大会及び同年一一月五日から山梨県甲府市において開かれた第二〇回中央委員会において、秋季年末闘争の目的として、団交再開、ILO条約の批准、仲裁々定二五〇円の即時実施、年末手当二ヶ月分の獲得、年末首繁忙手当の制度化確立等を要求することに決定し、全逓名古屋中央郵便局支部においても同月二八日の支部臨時大会において、一二月一日以降の時間外労働拒否、年末首繁忙業務(特に臨時小包便)不取扱の態度を決定し、その旨名古屋中央郵便局管理者側(以下管理者側と略称する)に通告して、秋季年末闘争に入つていたものである。そうして、被告人長谷川賀彦、同永島金八郎はその当時全逓の中央執行委員であり、オルグとして名古屋市に来て、被告人長谷川は名古屋鉄道郵便局に、被告人永島は名古屋中央郵便局においてそれぞれその全逓支部の組合活動を指導していたもの、被告人宇野鎗一はその当時全逓愛知地区本部執行委員長で、全逓名古屋中央郵便局支局に常駐して、その組合活動を指導していたもの、被告人大塚鎮一はその当時全逓名古屋中央郵便局支部長で、同支部の組合活動を統括していたものである。

二、通常名古屋中央郵便局に到着した小包便の郵袋は、同局作業棟四階受入作業室へ運搬されて、同室で開披され、その個数の照合等がなされた後、小包投入口に投入され三階小包大区分室に送られ、同室で区分された後、更に二階小包区分室の差立係へ送られ、小区分され、再び郵袋に入れられて一階の発着係へ送られる仕組みになつて居り、これら諸業務には全逓労組員が従事しているものである。

昭和三四年一二月一日午後一時頃名古屋市内集配の小包臨時便七九個が同局作業棟一階発着場に到着したが、同局の全逓労組員は一記載の闘争に入つていたため、同局小包課長三輪喜義は被告人永島、全逓労組員柴田彦左衛門、同近藤秀雄らに対し、全逓労組員によるその取扱いを要請したが、同被告人らはこれに応ぜず、同局四階受入作業室への運搬からその取扱いを拒否した。そこで同三輪課長は、同課の湯浅順次郎副課長に命じて、同日午後六時半頃、アルバイト学生数名を使用して右臨時便の郵袋を同局四階受入作業室の東隣りの年賀予備室へ運搬し、同室に保管した。

続いて翌二日に到着した小包臨時便六三個についても、三輪課長の命により、同局小包課長井佐伝一副課長がアルバイト学生を使用して、同日夕方頃同年賀予備室に搬入し、同室にこれを保管した。

このため一二月三日朝現在において同年賀予備室には小包の臨時便一四二個位が滞貨として残置されていた。

三、同局々長庄司清、同局次長寺本金松は同月二日午前、三輪課長から二記載の事実について報告を受けたが、同局長は三日の日には臨時便の滞貨の解袋処理を全逓労組員に行わせようと決意し、同月三日午前一〇時頃、局長室に同局の管理者一〇数名を集めて、その決意を伝え、名古屋郵政局とも連絡をとり、同郵政局の管理者河村人事課長、石原管理課長らを含めた管理者を集めて、更に同日午後一時頃協議し、同日午後二時から文書による業務命令を発して右臨時便の滞貨一四二個位の解袋処理を全逓労組員に強行させることを決定し、寺本次長を現場総指揮者とし、事態が紛糾すれば警察官の出動要請を考慮すると云うことも決定した。

四、同三日午後二時一五分頃、三輪課長から小包臨時便の滞貨の解袋処理について口頭で作業命令を受けた浦野功主事は、湯浅副課長、同局八木健一普通郵便課長及び名古屋郵政局石原管理課長らと共に、アルバイト学生鈴木淑雄、鈴木太郎、平野正道を伴つて、郵袋運搬用の鉄車を押して、名古屋中央郵便局作業棟四階年賀予備室北出入口から、同室内に入り、同室内にあつた臨時便の郵袋一四二個位の滞貨中一〇数個を同車に積んで同出入口からこれを同局作業棟四階受入作業室へ搬出しようとした。

被告人大塚、同宇野、同永島らは、その際に同所附近にいた組合員から、管理者側が臨時便の解袋処理を全逓労組員に押しつけようと、右臨時便の郵袋を受入作業室へ搬出しようとしている旨の連絡を受け、急拠全逓労組員約二〇名と共に同年賀予備室前へ集つた。そうして全逓労組員約四、五名が同室北出入口附近で同出入口から半分位出かかつていた鉄車の前に立ちふさがつて、右鉄車を同出入口の外側から押し返し、他の組合員約二〇名はその後方に立ちふさがあり、共に内側から鉄車を押し出そうとする管理者側と二、三分の間にわたつて押したり押されたりの状態を繰返した。ところが被告人宇野がその際、鉄車とコンベアー台との間に左腕をはさまれ「痛い痛い」と叫んだため、鉄車を押していたアルバイト学生が鉄車から手を離し、臨時便郵袋の搬出は中止されることとなつたが、被告人宇野は左前膊部に全治約一週間を要する打撲傷を負つた。

五、午後四時五分頃、庄司局長は、全逓労組員に臨時便の解袋処理をさせようと、寺本次長、三輪課長、長井副課長ら約三〇名を同局年賀予備室出入口附近へ臨時便搬出のために向わせた。同人らは同所で、参集している全逓労組員を排除して同室内に入ろうとしたが、四記載のように被告人宇野が負傷したので、その実況見分が行われるまでは、鉄車を動かさずそのままの状態にしておくようにとの全逓労組員の要請があつたため、管理者側は同室内に入つて臨時便を搬出しようとする行為を中止した。

六、同日午後六時四五分頃、庄司局長の命を受けた北川善一郎名古屋中央郵便局庶務課長は、同局作業棟四階年賀予備室前附近で、被告人永島に対し、口頭で同局からの退去を要求し、退去要求書を差し出したが、同被告人はこれを受取ることを拒否したので、同課長は右要求書を同被告人の足元に置き、それ以後一〇時頃迄の間同室前附近に集つていた全逓労組員に対し、携帯マイクを使用して、初めは五ないし一〇分後には一〇ないし一五分位の間隔で「当局職員以外の方は直ちに退去して下さい」「オルグの方は全員退去して下さい」などと断続的にその退去を要求した。

七、同日午後七時一〇分頃、庄司局長を含め名古屋中央郵便局及び名古屋郵政局の管理者側約三〇名は、同年賀予備室前に赴き、同局長及び北川庶務課長らが、同所に集つていた組合員らに対し「郵便物を出すからどいてくれ」と申し向けて、三輪課長ら数名が同室へ入ろうとしたが被告人四名を含む全逓労組員約二〇数名ないし三〇数名は、これを阻止しようとして同室入口附近にスクラムを組んで立ちふさがり「馬鹿野郎」などとののしり同室前附近から立ち退かなかつたため、同課長ら管理者側は入室することが出来なかつた。同七時三〇分頃、制服の警察官一個小隊約三〇名が到着したが、全逓労組員は「ポリ公帰れ、そんなことで年末警戒が出来るか、警官で郵便物を扱え」などと叫んで、中村警察署水谷清吾次長及び同警備課長大蔵林らのマイク、携帯メガホン、プラカードなどによる退去をしないときは不退去罪になる旨の警告に応じなかつた。そこで警官側は組合員に反省の機会を与えるため及び一個小隊では組合員を排除することは困難であるとの理由で、同八時二〇分頃同所から名古屋鉄道郵便局事務室附近へ引揚げたので、管理者側もこれに応じて同所から引揚げた。

八、同日午後九時頃、同四階年賀予備室附近に居た寺本次長に対し、被告人長谷川、同宇野、同大塚が近寄つて来て、被告人長谷川が「こういう事態を起したのは官側の責任だ、速かに事態を収拾して欲しい」と抗議し、被告人大塚は同次長に話し合いを求め、同局応接室で同次長と被告人大塚とが話し合つたが、同次長は「事態は緊迫しておるんだから善処して呉れ、組合の意思を速やかに官の方に早く伝えなだめだ」と申し向けた。被告人大塚は「予備室から郵袋を出してどうする。明日はどうなるのか。郵袋を開けても三階へ流すのを止めて貰い度い」と申し向け、これに対して同次長は「明日は明日のことであり、郵袋を出すだけではいけない」と答えたので、話し合いは解決を見ないままに終つた。更に同九時四〇分頃、同次長は全逓労組側の要請で同局庶務課室で被告人大塚と会い、同被告人から「郵袋を開けるのはいいが三階へ下すのは何んとか止めれんか」との申し入れを受けたが、同次長は「それは駄目だ」と答え、話し合いによる解決はつかめなかつた。

九、同日午後一〇時頃、庄司局長及び名古屋郵政局越郵務部長から飽く迄滞貨の搬出及び解袋処理を強行したいから警官隊を出動させて欲しいとの連絡及び要請を受けた警察側は、警官隊二個小隊約六〇名の増援を求め、計三個小隊約九〇名となつて管理者側約三〇名と共に同年賀予備室前附近に赴いた。これに対して、被告人四名を含む全逓労組員は同年賀予備室北出入口前にスクラムを組んで坐り込んだので、庄司局長ら管理者側と警察側がこもごもマイクで退去を要求したり、退去要求文書を朗読したり、プラカードを表示したりして、同所から退去を求めたが、全逓労組員は労働歌を合唱するなどしてこれに応じなかつた。同一〇時一五分頃、管理者側が一団となつて同年賀予備室へ押し入ろうとしたが、全逓労組員に押し返され入室出来なかつた。そこで同一〇時二〇分頃警察側は全逓労組員に対し「今から五分以内に退去しないときは不退去罪の現行犯として逮捕する」旨の警告を発したが、被告人四名を含む全逓労組員は依然として坐り込みを続けたため、同一〇時三〇分頃被告人四名は警察官によつて不退去罪の現行犯として逮捕され、他の全逓労組員は、いわゆるごぼう抜きにより強制退去をさせられた。そこで管理者側は同一一時頃までの間に同年賀予備室内の小包臨時便の滞貨全部を同受入作業室へ運搬した。

以上の事実は、

一、当公判廷における各被告人の供述

(中略)

によつてこれを認めることが出来る。

第三、威力業務妨害罪の無罪について

一、検察官は前記第二の四、五、七、九認定の各被告人の行為を以つて、威力業務妨害罪に該当すると主張する。その理由は各被告人において、管理者側が年賀予備室に保管中の小包臨時便の郵袋を受入作業室に運搬して、受入開袋の作業をしようとするのを、他の全逓労組員と共謀して妨害しようとピケを張つたものであるからと云うのである。ところで小包便の郵袋の受入開袋の業務とは前記第二の二で認定したように受入作業室で郵袋を開け、小包の個数等を照合し、これを普通小包と書留小包とに分けて、小包投入口に投入し、三階の小包大区分室へ送ることを意味するのであるが、前掲各証拠によれば臨時小包便が小包投入口から小包大区分室へ送られてしまつた段階では、その後の作業過程において通常の小包便と区別して臨時小包便は取り扱わないでおくと云うことが到底出来ない事実であることが認められると共に、前記第二の二認定のようにこれら受入開袋の業務及びその後のこれに続く一切の業務過程においては、全逓労組員がこれに従事しているのである。そうして更に前掲各証拠によれば、名古屋中央郵便局小包課においては昭和三四年一一月一日から一二月三一日までを年末の繁忙時期としていたものであり、管理者側が年賀予備室から受入作業室へ小包臨時便の郵袋を運搬しようとした目的は、まさにこの年末繁忙の時期に臨時便の解袋処理の作業を全逓労組員に取り扱わせることにあつたのであり、全逓労組員がこれを阻止しようとしたのは、臨時便の解袋処理作業を取扱わないことを秋期年末闘争の目的として掲げその闘争に入つていたためであることが認められる。

二、そこで次に全逓労組員が昭和三四年の年末首繁忙時期において臨時便を取り扱う義務があつたか否かについて考えて見る。刑法二三四条の「業務」は刑法上それが保護に値するものであることを要すると解されるのであるが、全逓労組員に臨時便を取り扱う義務がないとすればこれを全逓労組員に取り扱わせようとする管理者側の行為は義務のない者に作業を強制するものであり、違法と評価されるものであつて、刑法上保護するに値するものとは考えられないからである。そうして全逓労組員に臨時便を取り扱う義務があつたか否かはその国と締結した労働契約の内容によることになる。

三、全逓労組員と国との労働契約の内容は郵政省の就業規則、全逓と郵政省の間に締結された労働協約、全逓と郵政省との間における団体交渉による合意或いは両者間における慣行などによつて定まるものと考えられる。

前掲各証拠、第一八回公判調書中の証人大出俊の供述部分、第一九回公判調書中の証人湯山達夫の供述部分、昭和三三年四月現在の全逓信労働組合の協約協定類集中の昭和三一年度の年末首繁忙手当の支給に関する覚書及び昭和三三年度における郵便局の年末首特別繁忙に対する手当支給に関する協定によれば、全逓労組員である郵政省職員の職務は郵政省と全逓との間の勤務時間に関する協約によつて郵便業務配送に関する結束表に基いて作成される服務表、勤務指定表、担務表に基いて行われ、年末首には各郵便局の作業内容の密度が平常時に比べて異常に高くなるため、年末首結束表が作成され、これに基く勤務指定表、担務表が定められて職務及び担務が円滑に行われるものであると共に、これらの作成に当つては、郵政省と全逓労組との間に労働基準法三六条に基く時間外協定が締結されることは勿論、その他昭和三〇年以来郵政省と全逓労組中央本部との間で、年末首繁忙対策要綱について団体交渉を行いその妥結を見て、更に各郵政局と全逓地方本部、各郵便局と全逓支部との間にそれぞれ団体交渉を行つてその妥結した内容に基いていたものであり、これと共に全逓労組員には年末首繁忙手当が支給されその他夜食費や仮局舎への通勤に要する手当などが支給されるなど労働条件の改善の措置がとられた上で、年末首繁忙業務を全逓労組員である郵政職員は行つていたことが認められる。

四、ところが前掲各証拠によれば昭和三四年一二月三日の本件当時においては郵政省と全逓本部、名古屋中央郵便局と全逓名古屋中央郵便局支部との間には労働基準法三六条に基く時間外協定は締結されて居らず、年末首繁忙に関する諸取り決めもなされず全逓労組員に対してはこれらの協定等に基く諸手当は勿論支給されず、年末首結束表に基く勤務指定表、担務表等も作成されていなかつたことが認められる。

五、そうだとすれば、昭和三四年一二月三日の本件当時全逓労組員が臨時便の取り扱いについて、その労務を提供する義務は存在しなかつたものであるといわなければならない。そうして臨時便を取り扱う義務のない全逓労組員に対し、これを取り扱わせようとする管理者側の行為は違法な業務を全逓労組員に押しつけようとするものであると認められるから、右業務は刑法二三四条にいう「業務」には該当しないものである。

六、仮りに本件業務が刑法二三四条の「業務」に該当するとしても、公共企業体等労働関係法一七条によつて禁止される諸行為は業務の「正常」な運営を阻害する行為であると解されるところ、前記第三の一ないし五で見たところから明かなように、本件業務が正常なものであるとは考えられないから、被告人四名の行為は同法条には該当しないものである。従つて被告人四名の行為は労働組合法一条二項の適用を受けるものであり、前記第二で認定したところによれば本件における被告人四名の行為はいずれも暴力の行使に出たものでないこと、且つ、被告人らにおいて管理者側の企図する郵袋の搬出を阻止しなければ、管理者側の手により臨時便の小包郵便物が三階小包大区分室に通ずる投入口に投入されそのため必然的に同室勤務の全逓労組員が義務なき労働を押しつけられる結果となる情勢にあつたことが認められるから、これらの事情を考えれば、被告人四名の行為は、労働組合法一条二項に云う労働組合の正当な行為に属するものと解すべきであり、従つて、この点からしても、仮りに被告人四名の行為が刑法二三四条の構成要件に該当するとしても右行為は違法性を欠くものと云うことができる。

第四、不退去罪の無罪について

検察官は前記第二の六、七、九の各被告人の行為を以て不退去罪に該当すると主張するが、前記第三において述べたように被告人四名の名古屋中央郵便局作業棟四階年賀予備室出入口附近における諸行為は、全逓労組員の労働条件が、中央郵便局管理者側の違法と評価される臨時小包便の解袋処理業務強行の方針によつて悪化することを防ぎ、その労働条件の維持向上を図るためになされたものであり、この行為は憲法二八条によつて保障される正当な組合活動であることが明らかである。そうして前掲各証拠によれば全逓労組は中央本部の下に下部組織として地方本部、地区本部、支部をもつて組織されている単一組織体であることが認められるから、被告人大塚を除くその他の被告人らが名古屋中央郵便局を職場とせず全逓同支部の上部機関の役員であつても、この理は同じである。

そうだとすれば、右年賀予備室附近における被告人ら四名の滞留の目的には何ら違法と評価されるものがないし、その方法などにおいても違法と評価されるものがないことは前記第二の六、七、九の認定のとおりであるから、本訴因についても被告人ら四名の行為はその違法性を欠くものと云わなければならない。

第五、以上二つの訴因については、第三及び第四で見たようにいずれもその証明が十分でないから刑事訴訟法三三六条後段により被告人らに対しいずれも無罪の云い渡しをすることとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 赤間鎮雄 高橋正之 小島裕史)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例